「種の起源」感想
- 作者: チャールズダーウィン,Charles Darwin,渡辺政隆
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/12/20
- メディア: 文庫
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種の起源って有名だけど読んだことない人多そうだ。
かくいう自分も名前だけ知っていて内容はあまり知らないタイプの人間でした。
「100分で名著」で昔放送されていたから大まかな内容は理解していたつもりだったけど、いざ読んでみるとかなり印象変わるな。
時代背景を考えると分かるけど、徹底的なまでに論破して叩きのめそうという意思が感じられる。
それまでの一般の認識は生物は神様が、各地の生活条件に応じて作り出したと考えられていたから、その説を全否定して、様々な角度から「その考えじゃこれやあれは説明できないよね。」を何度も繰り返しているといった本。
当時の科学研究を総動員しているといっていい。
最初にダーウィンは家畜などにおける飼育栽培化での変異について論じている。
犬やハトは長い間、人間に飼育されてきた中でたくさんの種類に変化している。それは、人間がある特徴が抜きん出ている個体同士を選別して掛け合わせていった結果である。これが自然界でも生存競争の結果として発生していると説明する。これを「自然淘汰」という。
ダーウィンは自然淘汰説を補強するためや、反論への反論のためにあらゆる生物や学問を駆使してゆく。
例えば、「ニュージーランドの飛べない鳥は天敵がいないため飛ぶための翼が必要なくなったため退化したのだ。これは既存の理論では説明できない」とか「反対論者が例に挙げるミツバチの巣を作る本能は徐々に蓄積されたものであり、最初は円筒形状の巣から徐々に緻密な巣になったはずであり、これは自然淘汰説に合致している」といった具合に。
僕が読んで思ったのは、総合的な見地から論駁していっているなということ。
当時の知識だから一部現代の知識とは違う部分もあったけど(大陸移動説ではないなど)、地質学・地理学・形態学・発生学といった様々な学問を取り上げている。
生物種についても、冒頭の犬やハトの雑種、ヒツジやウシといった家畜、ヤドリギやサクラソウといった植物、奴隷アリやミツバチやアブラムシなどの昆虫、大ナマケモノやグリプトドンといった化石哺乳類、果ては肺魚やフジツボに至るまで、広大な範囲について取り上げている。逆に意外なことにダーウィンフィンチやガラパゴスゾウガメの記述はほとんどなかった。
ただし、わかりにくい部分も結構ある。
種の定義とは何かという部分はなかなかにややこしい。
全く知識のない状態で読んだら種や変種や属の段階でつまづいてしまいそうだろう。
ちなみに、上下2冊のボリュームのある本だけどこれ、もともとはより長い本編のための前駆だったらしい(^^;)
ダーウィンに博物学者アルフレッド・ラッセル・ウォレスという人物から自然淘汰説と同じ見解の書簡が届いたため本編を書かずに早めに学会で発表したらしい。
これ以上長かったら読むのはやめていただろう・・・。