化石の夢

オリジナル短編『コズミック・フェイス』

 

 

 

 宇宙人とのファーストコンタクト。アニメや映画ではよくあるそんな日がよもや来るとは青年は今まで思わなかった。

 しかし、それはある日現実となった。

 

 その日も青年はコンビニで接客をやっていた。宇宙人が円盤から姿を見せようという記念的出来事があるというのにシフトで休めなかったのだ。

 

 そろそろ円盤から降りてきた宇宙人が地球の代表と顔を合わせているころだろう。

 ぼけーとしながら適当に接客をしていた青年はおかしなことに気づいた。客の反応がおかしい。

 

 青年を見るなり、驚いたり、悲鳴を上げたり、じろじろ見てきたり、しまいには写真まで撮ってくる人が現れたのだ。写真を撮るのはいただけないので注意をすると、相手はこんなことを言ってきた。

 

「テレビを見てないんですか? とんでもないことになってますよ」

 

 青年はシフトを終えると、休憩室に置かれているテレビにくぎ付けとなった。それは宇宙人の代表と地球人の代表が握手している光景だった。どんな宇宙人かと思っていたが、まるで地球人そっくりの体をしている。いや、それよりも問題なのは、宇宙人の顔がみんな青年と瓜二つなことだった。

 

 

 翌日から青年のバイト先や家にテレビや雑誌の取材が押し寄せることになった。

 彼がバイトに行くと、昨日よりさらに多くの人がいた。みんな写真を撮ってきたり、サインを求めたりしてきた。狭い駐車場は車でいっぱいになり、付近は渋滞した。

 

 そして、バイト終わりに店長から話を切り出された。

 

「このままじゃ営業に支障がでるからしばらくの間、休んでいてくれないか?」

 

 青年は仕方なくそれを了承した。

 困ったのは家に来る人たちだった。

 どこから聞きつけてきたのか住んでいるアパートを特定してきて、青年は自分の部屋から出られなくなった。

 

 窓からちらりと外をうかがうと、待ってましたとばかりにテレビカメラやスマホが向けられた。テレビを見る限り、海外からの取材陣も来ているようだった。SNSでも青年のことが特定され、今までどこの学校に通っていたか、交友関係、実家の住所なんかも拡散されているようだ。

 

「まいったなあ。これからどうしたものか」

 

 青年と宇宙人の関係をめぐって、たくさんの仮説が提唱された。

 共通の祖先をもっているという人もいれば、どこかの段階でDNAを抜き取られてクローンが作られたとする説、インターフェースとして宇宙人は仮の姿をしているという説、宇宙人ではなく未来から来た本人説まで登場した。

 

 そして、青年は政府に保護された。保護とは名ばかりであり、その実態は確保といっていいだろう。青年は重要な宇宙人との交渉材料とされたのだ。

 

 青年は自身の境遇を、昔見たセカイ系のアニメに重ねた。まさか、こんな人生となるとは、青天の霹靂だ。見たいアニメももう見れないかもしれないな。

 

 政府に保護された青年のもとに知らせが届いた。

 

「宇宙人の代表が君に会いたがっている」

 

 そうして、宇宙人と青年は顔を突き合わせた。

 青年は宇宙人と顔がそっくりなことが判明した時から、いつかこうやって地球の代表として会う日が来るのではとなんとなく察していた。

 

 相手は宇宙人だが、自分とそっくりだ。それでも緊張はするものだ。

 

「我々があなたを呼んだのはほかでもない。謝罪したかったからです」

 

 宇宙人の代表は開口一番こう言った。

 

「どういうことですか」

 

「あなたを騒動の渦中に巻き込んでしまったこと。我々はある日、地球からの電波を発見しました。検証の結果それはテレビ放送の電波でした。我々はそこに映っていた顔を適当に選んで地球人とのインターフェイスにしてしまったのです」

 

 青年は愕然としてしまった。そんな理由で人の顔を勝手に・・。だが、それと同時に安堵もした。巷の囁かれている噂は間違っていたのだ。

 

「理由は分かりました。その事実をさっさと公開してください。今更手遅れかもしれないですが、少なくとも今よりはましな状況になるでしょう。あと、顔も別人のものにしてください。その顔でいられると非常に困る」

 

「では、別の人の顔を模倣したいと思います」

 

「待てよ、そうしたら別の人が俺と同じ目に合うかもしれないな」

 

「困りましたね」

 

「そうだ、仮面でもかぶればいいじゃないですか」

 

「しかし、地球人の礼儀として、公式の場所では相手の目を見て話すのがマナーだと思うのです。仮面をつけて目を隠すのは失礼に当たるのでは?」

 

「うーむ。誰かの顔を模倣すると俺みたいな厄介ごとに巻き込まれる人が出てくるわけだし、宇宙人さんの信条としては地球人の顔は必要不可欠というわけか」

 

 青年は少し考えたあとで、ひらめいた。

 

「そうだ、誰も騒動に巻き込まれない方法が一つだけあります」

 

 

 翌日、地球人のもとに現れた宇宙人たちの顔は変化していた。

 それはアニメに出てくる美少女の顔をしていたのであった。

 

 青年はそれを見て、やっと重荷から解放された気分だった。しかし、他方ではこうも思った。

 

「はたしてこれで本当に良かったのかな?」

 

 

 

『サブリミナル・インパクト 情動と潜在認知の現代』(下條信輔 著) 感想

 

 

 

 この著者の本は他にも前に読んでいて、人間の決定や思考が実は自由意志ではなく、それ以外の段階で決まっているという説はすでに知っていた。

 

 その説を示すいくつかの実験も紹介されていて、その中でも初めて聞く人には驚きなのが選択盲の研究だろう。

 二人の人の顔写真を並べて見せて、どちらがいいと思ったかを決めてもらい、写真を一度回収してもう一度、選ばれた顔写真を見せて、その理由を説明してもらう実験だ。

 

 実はそのうちの何回かで、逆に選ばれなかった方の顔写真を見せて選んだ理由を聞くと、たいていの被験者は顔写真のすり替えに気づかずに、その理由を説明するという。

 

 ここから、人の選択における理由というものが実は後付けであり、まやかしだということが分かるのだ。

 

 簡単に無意識といいたいのだが、本の中でなんか意識と無意識の間に前意識とかいうものも紹介されていたので、それと区別するためにおそらく著者は情動とか潜在意識とかいう単語を用いているのだろうと思う。

 

 この情動だとか潜在意識とやらをキーワードに現代社会を考察されているのが、興味深かった。CMや選挙でも確信的かそうでないかはともかく、非常にクリティカルに狙い撃ちされている感がある。

 

 なんだかマーケティング論を読んでいる気にもさせられた。この狙い撃ちに対して、人はその仕組み知っているだけでは、対処が難しいらしい。それだけ情動や潜在意識は強いらしい。

 

 政治の世界ではこのターゲット戦略が良く用いられる。この本は2008年の本ではあるが、現在の陰謀論や嘘がはびこって何が真実で何がそうじゃないのか分からないほど、狂った情報戦を呈する時代を見て、憂鬱な気分にさせられる。

 

 しかも情動は刷り込みできるので、あとから嘘であったと分かってもかまわないという。

 

 最後の章では、話を変えて創造的な才能はどのように生まれてくるのかについて話が向かう。

 

 目からうろこだったのは、創造的なアイデアを見つけるためにはたくさんのことを吸収して忘れるということだった。意識の段階で覚えておくことが重要なのではなく、一度忘れて潜在意識に取り込めということを提唱していた。

 

 俺もそれを利用してみようかなあと思ったりした。

 

2026年9月10日の日記

 

 朝は11時くらいに起きた。

 隣の家が工事をしていてものすごい作業の音がしていたが、その中でもよく眠れたものだと思う。

 

 最近は朝起きるのが遅いから朝食の代わりに昼食を食べることが多い。

 今日はカップ麺を食べる。初めて食べるちゃんぽんのカップ麺だったが、普通においしかった。

 

 外に出てスーパーでも行こうかと思っていたら、雨が降ってきた。

 その降り方が微妙でぽつぽつ降ったりやんだりを繰り返していたので、予定の変更はせず自転車でスーパーまで。帰りに結構降ってきて濡れてしまった。

 

 外出の予定は前日くらいから考えていて、予定がなくなるとなんだか落ち着かないので、よほどのことがない限り予定は変えない。

 

 スーパーでジュースとお菓子を一つ買って、家に帰ってネットと読書。

 それでなんか眠くなったのでしばらく仮眠。起きたら8時くらいだったので夕食を食べて、また眠る。

 

 さっき起きて日記を書く。

 眠るのはいいのだが、ジュースを飲みながら眠るのはたとえ少しの睡眠でも虫歯ができそうで避けたいところ。歯医者はあまり行きたくないからな。

 

 

2026年9月9日の日記

 

 せっかく久々に投稿したのだからついでに日記も書いてみようなどと思い立った。

 まあ、三日坊主だからいつまで続く分からんが。

 

 

 今日は朝から大雨の予報だったけど、そこまでの降雨量じゃなかったみたいだ。

 9時くらいに一度起きて、朝食をとってまた眠くなったから横になって寝た。

 

 どうにも眠気に抗いづらい。

 また目が覚めたらもう12時だった。

 

 で、昼食を食べてあとはいつも通りネットでSNSや今期アニメを見たり読書して過ごした。

 

 で、楽しみにしてたUFO番組があったのだが、前半また眠気で眠ってしまい、後半はなんとか起きて視聴した。それで見終わって晩御飯。

 

 図書館で本は普通3冊までで借りてるんだけれど、先週は予約だけでなく本棚を見て決めたから4冊も借りてしまった。で、まだ一冊目を読んでいる。もっと、読む速度を早くしたいけど難しい。このままだと再貸出しコースかな。

 

 このところ両親はおじいちゃんのことをよく話している。

 認知症気味で体調もよろしくないから入院したらしい。俺の知っている病院だが、これもなにかの縁だろう。とりあえず無事決まってよかった。

 

 そして、結構前から書いている読書ノートがあと3ページほどになった。AIに聞いた読書ノートのいいつけ方を参考に、俺は本のタイトル、日付、ページごとに気に留めたことなどを書いていくスタイルだ。

 

 ただ、2冊同時に並行しながら読むときもあるので、その時はどうやって書き留めようか考えている。

 

 

 

 

 

 

オリジナル短編「エスパー迷衣」 

 

 超久しぶりのブログ記事を書いている。

 前の記事が一年前だから不定期投稿すぎるな。

 

 この一年、いい方に進んだりまた戻ったりと、あまり変わり映えのない毎日だったが、まあそれはおいといて、俺はずっと前から小説家になろうに自作の短編をいくつか投稿してきた。

 

 一応SF(空想科学)というなろうではマイナージャンルで書いていたからもともとの閲覧数は少なかったが、ここ最近は特に少ない!

 

 この間この「エスパー迷衣」を短編集に投稿したが、そのときのPVがたったの2!

 投稿時間がまずかったのかと比較的人がいるらしい朝の7時に投稿してもPVは6だった。

 

 他の作者の同ジャンルもだいたいそんな感じのPVだったから、基本的にはみんなこんな感じなのだろう。とはいえPV2ってのは少ない。なんか人が少なくなってきているって噂も聞く上に、投稿数は増加して、最近ではAIの執筆も増えて、飽和状態になっていると聞く。

 

 そこで、試しにブログの方で短編を投稿したらどうなるか試してみようと思い立った。なろうと違って一つの記事ごとに閲覧数が分かる仕組みではないが、たまには別媒体で出すのもありだろう。

 

 ということで、実験的に記事を作った。

 オリジナル短編をどうぞ。

 

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「エスパー迷衣」

 

 

 

 

「私、透視ができるようになったんだよね」

 

 夏の暑い日に家を訪ねてきた友人の月ヶ瀬迷衣が突然どや顔で言い出したので、俺は彼女の頭を心配した。

 

「熱中症にでもかかったか?」

 

「さてはルフくん信じてないね?」

 

「もちろん。何がどうしてそういう結論になったのかサッパリわからん」

 

「まあ騙されたと思ってちょっと見て行ってよ」

 

 月ヶ瀬は居間のテーブル横に座り、なにやらトランプのカードのようなものを並べ始めた。トランプっぽく見えるのは裏の紺色で形作られた模様だが、カード自体は正方形の形をしており、どうやら違うようだ。

 

「それ何?」

 

「ゼナーカード」

 

「ゼナーカード?」

 

「これはね、超能力者の研究に使われた歴史ある道具でね、表にあるマークは5種類。カードを裏返しにして、表のマークを言い当てられたら透視能力があると判断される」

 

 彼女はためしに俺にゼナーカードのマークを当ててみろと言ってきた。

 

「ええっと、じゃあこれは十字のマークかな?」

 

 月ヶ瀬がゼナーカードを裏返す。星型だ。続いて、俺はいくつかあてずっぽうで言ってみたが、どれも外れだった。

 

「さて、今度は私の番だね」

 

「こんなの分かるわけないだろ」

 

「そんなに言うなら、何か賭けてみない?」

 

「いいとも。何にする?」

 

「そうだねえ。冷蔵庫にあるアイスとかで」

 

「よし、そうしよう。透視できたらアイスを食べてもいいぜ」

 

 そうして俺と月ヶ瀬はテーブルに向かい合い、

 

「ルフくん、適当にカードを選んで裏返しにしてよ」

 

 俺は言われたとおりにした。机の上に一枚のカードが裏返しに置かれている。

 月ヶ瀬はじっとカードを見つめ、目を細めたりいろんな角度から眺めていたが、ややあって、

 

「なるほど、これは波型のマークだと思うな」

 

「そう簡単に当たるわけないって」

 

 俺はカードを裏返した。マークは波型。あれ? 合ってる・・。

 つづいて、俺は別のカードを裏返して置いた。

 

「これは丸型だね」

 

 裏返す。大きな丸がそこには書かれてあった。

 マジか? どうして分かったんだろう。俺はゼナーカードをしげしげと眺めた。特徴的な傷とかがついているのかと思ったが、どうやらそういったものはないようだ。

 

 さらに、俺は月ヶ瀬に何回かテストを行ったが全部的中だった。

 信じられないが、これは確立の域を超えている。

 

「なんてこった。これはいったいどういうことなんだ?」

 

「じゃあ約束通りアイスをもらうね」

 

 月ヶ瀬は立ち上がり冷蔵庫の中からカップアイスを取り出し、台所からスプーンを拝借して目の前でおいしそうに食べ始めた。

 

 俺はどこかにトリックがあるのではないかとカードを確かめていたが、何もおかしなところはない。もしやこれは本当に超能力なのか? 

 

 俺は興奮して友人のふぁん太にLINEを送った。

 

<月ヶ瀬が透視能力に目覚めたかもしれない>

 

 すぐに既読がついて返事が来た。

 

<今家で暇だから俺もルフの家行くわ>

 

 

 

 そうして15分ほど後、俺がトリック暴きにやっきになっているところにインターホンが鳴った。

 

「誰か来たよ」

 

 月ヶ瀬がアイスをスプーンで口にほおばりながら言う。。

 

「ふぁん太だろ。さっき月ヶ瀬の透視のことを教えたら自分も見に来るって言ってたからな」

 

「ふぁん太くん? ああ、そうなの」

 

 なんだか月ヶ瀬が視線を泳がせて、うろたえているような気がするが、とりあえず俺はふぁん太を迎え入れた。なぜかふぁん太はサングラスをかけていた。

 

「どうしたんだサングラスなんかかけて」

 

「ちょっとな。で、マヨちゃんがいるんだってな」

 

「そうなんだよ。マジで超能力に目覚めたのかもしれなくてさ」

 

 居間にいた月ヶ瀬がふぁん太を見ると、おどおどと視線をそらした。

 なんかさっきから挙動不審だ。

 

「実はさ、俺も透視できるようになったんだわ」

 

「ふぁん太もか?」

 

「ああ、今からやってやるからじっくり見てな」

 

 ふぁん太は月ヶ瀬の隣に座り、ゼナーカードを俺に渡して裏返しにするように促した。

 俺はゼナーカードをシャッフルしてランダムに選んだものを裏返して机に置いた。

 

「なるほど、見える見えるぞ!」

 

 ふぁん太は大げさに手を広げてみせると、

 

「これは星型だな」

 

 俺はゼナーカードを裏返す。それは星型のマークだった。

 

「偶然じゃないのか? 続いてこれはどうだ?」

 

 続いてゼナーカードを置く。

 

「これは四角だ」

 

 裏返すと確かに四角マークだった。

 

「マジか! なんで分かるんだ?」

 

「かけてみろよ」

 

 ふぁん太は俺にサングラスを渡してきた。

 なぜサングラス? もしかして・・。

 

 俺はサングラスをかけてゼナーカードを見た。

 

「ああ! なんだそういうことか!」

 

 ゼナーカードの裏側に蛍光色の青い光が四角の形を作っていた。他のカードも表と同じ蛍光色の形が書かれている。

 

「ルフはあまり詳しくないから知らないんだろうけどな、ついこの間テレビで透視をしていた自称超能力者が同じイカサマをして炎上したんだよな。このサングラスをかけると、ゼナーカードの裏に書かれた透明の塗料の色が見えるようになるんだよ。まあ、その超能力者はサングラスじゃなくてコンタクトレンズを使ってたらしいけど」

 

 なるほど。ふぁん太はオカルト系のサイトの管理人だ。このトリックを知らないはずがない。

 

 俺は月ヶ瀬を見た。

 ふっふっふと彼女は食べ終えたアイスのカップを置くと、両手を勢いよく合わせて、ごめんねのポーズをとった。

 

「そういうこと!」

 

 彼女は目からコンタクトを外して、ケースに入れた。

 

「このコンタクトレンズは最近発売された代物でね、いやあこんなにうまくいくとは思わなかった」

 

「俺のアイス返せよ!」

 

「もう食べちゃった」

 

「ったく」

 

「まあアイスくらいいいじゃないか。これが悪質なイカサマ師ならどれだけ搾取されてたか分かんねえぞ」と、ふぁん太。

 

「ルフくんのために新しいアイス買ってあげるからさ、そう怒んないでよ」

 

 上機嫌でゼナーカードをしまう月ヶ瀬。と、俺はある疑問が芽生えた。

 

「そういえばなんで月ヶ瀬は俺んちの冷蔵庫にアイスがあること知ってたんだ? 教えた覚えはないが」

 

 すると月ヶ瀬はどや顔で言う。

 

「それは私がエスパーだからだよ」

 

 もういいってそれ。

 

 

 

 

『立花隆の「宇宙教室」』 立花隆・岩田陽子 著  感想

 

 

 立花隆さんの本を読みたいと思っていろいろ物色していたら見つけた本。立花さんが小学生に宇宙のことを教える授業の記録ということで興味が湧いて手にとった。

 

 前半は宇宙の研究者や科学者との対談形式をとり、この章で宇宙の最前線について知識を深め、後半の実際の授業の流れの中で、いかに「正しく思考する技術」を磨くのかを書いている。

 

 自分も小学校・中学校・高校・大学といろんな人の講義を授業で聞いたはずなのだが、今では何一つ覚えていない。ちゃんと聞いて感想文なんかも提出したはずなのに、なぜか何一つ覚えていないのだ。多分それ以外の人生の出来事に上塗りされたのか、もしくは理解したと思ったのは上っ面だけで実際はさほど興味を持っていなかったからか。

 

 しかし、富沢小学校で行われた宇宙の授業はかなりの時間にわたって行われたらしいから、授業を受けた小学生たちはさすがに将来も覚えているはずだろう。

 自分もこういう特別授業を受けたかった。

 

 4つの思考する上で重要な点が語られており、それは「無知の知」「並行思考」「宇宙的スケール」「科学を見る目」であった。

 ちゃんとこの4つを覚えていたいが、悩み多き日常の中で、昔受けた授業のようにあっという間に忘れてしまいそうでもある。ことあるごとに思い出して、血肉にしていきたいと思った。

 

『なぞとき深海1万メートル 暗黒の「超深海」で起こっていること』 蒲生俊敬・窪川かおる 著 感想

 

 

 深海1万メートルのなぞときと題名にあるように、たくさんのカラーイラストや図を参照しながら深海調査の歴史や、そこに住む生物、環境について分かりやすくバランスよくまとめている良書。

 

 世界最深部のチャレンジャー海淵にまで潜航した人を数えると、わずか13人らしい。宇宙空間に行った人は2020年8月の本書の書かれた段階で566人、世界最高峰のエベレストに登頂した人は2010年時点で3000名を超えている。

 

 「宇宙よりも遠い場所」というアニメを昔見たことがあるが、南極に行った人よりもさらに数は少なそうなので、より宇宙よりも遠いと言えるのではないだろうか。

 

 潜水球(バチスフェア)の時代から始まった偉大なる先人たちの知恵と努力と勇気の歴史のおかげで、深海の秘密のベールが剥がされていく過程には感動した。

 

 また、ヴィスター・ヴェルコーヴォ氏が5大洋の最深点に到達したことはこの本を読むまで知らなかった。おそらく宇宙や恐竜なんかよりも深海に対する興味を持っている人が少ないから、報道もあまりされなかったのだろう。

日本は海溝がたくさんある深海大国なのに勿体ない気もする。

 

 2000年で海の表層と深海を循環する熱塩循環や、その循環に乗って鯨骨や熱水噴出孔を探してあてもない旅をする深海生物など、スケールが大きくて圧倒された内容も多い。

 

 本書の最後には深海に迫りくる環境問題の章があった。

 マイクロプラスチックが海溝に集まりすでにカイコウオオソコエビといった深海の生物に蓄積されつつあるということや、地球温暖化により極地の海水が冷却されなくなることで熱塩循環がなくなるかもしれないという話は、海が壮大なスケールでつながっているという事実を教えてくれる。

 

 いろいろ環境問題なんかはあるけれども、深海はロマンに溢れているんだと思わせられる一冊だった。