化石の夢

『宇宙のはじまり』 感想

 

 

宇宙の始まりはビッグバンであることは、すでに知っている。この本ではどこまで深く宇宙の始まりについて書かれているかが気になり読んでみた。

 

 まず、この本には独特の比喩がよく出てくる。

 著者は原子の構造をマカダミアンナッツに例え、チョコをエネルギー、ナッツを原子の中のクォークとし、その取り出しにくさをナッツにチョコがこびりついたり、ナッツが割れてしまうといった表現で説明している。

 その比喩を結構な頻度で登場してくるゆるい感じのイラストが補完していて、とても分かりやすい。

 

 自分が好きなイラストは、温度とは何かの部分で出てきた「相転移」を説明するために使われたイラストだ。部屋を気体の状態で飛び回っていた分子が冷たい窓に触れることでエネルギーを奪われて、冷えた状態になると水滴になる。

 修学旅行でスキーに行って自由に動き回っていたのが、消灯時間を迎えて疲れて寝てしまう様に例えていて、家の中で飛び交う粒子が擬人化されてスキーをしているのが見ていてなんか落ち着いた。

 

読んでいて、気づかされたのが、そもそもビッグバンとは何かの記述だった。ずっと過去に物質が一箇所に集まって超高温の塊になっている時期があったはずで、それがビッグバンであり、爆発ではないと言う言葉にハッとさせられた。

 

同じく、宇宙には中心もなく果てもないと言う記述も驚いた。

 

この本の重要な部分である、ビッグバンの時に何が起こったかについて、時間や温度の単位が10-44秒だったり、1032度と普段の生活からは想像もできないほど短かったり熱かったりで、途方もないことだったんだなあと。

 

1012度はウルトラマンに出てくるゼットンの火球の温度であり、その温度よりも高いことはなんとなく理解できていたが、人間の作ったLHC(大型加速器)でもその温度よりも高い温度を再現することができると聞いて驚いた。LHCでは粒子を加速することで、温度の高い状態を作り出すことができる。

 擬似タイムマシン 。「ビッグバンを再現する」わけだ。

 

 宇宙の始まりに何が起きたか。宇宙の晴れ上がりだったり、ヒッグス粒子の誕生だったり、対称性の破れといった言葉が出てきたが、読んで良かったと思える内容だった。