化石の夢

『化石の意味』感想  古生物学の歴史

 

化石の意味―― 古生物学史挿話

化石の意味―― 古生物学史挿話

 

【内容紹介】

古来、人々は化石をどのようなものと捉えてきたか。
16世紀のゲスナーから19世紀末のマーシュまで、豊富な一次資料を駆使して、
化石の起源、生物の進化と絶滅、神と自然、地球の歴史、人類の誕生などの解釈の歴史を描く。

 

【感想】

 これは難しい、難解な本だった。

 ある程度の哲学的、宗教的な知識がないと序盤からネット検索を多用しなければ読むのに支障が出るくらいの語句が四方八方から飛びかかってくる。

 新プラトン主義だったり、アリストテレス的永遠主義だったり、プラトンイデアだったり・・・。

 この類の本は読んだことなかったから○○主義だとか○○的というワードがこれほどかというほど出てくるのには参った。文章も独特の癖を持っていて一回で理解できない部分も多かった。

 それでも、この本は化石がどういう理解や解釈を辿ってきて、どのように古生物学が発展してきたのかを知るには充分な内容が伴っていた。複雑な過程を経てきた化石の意味の問題を具体的に、誤りのないように、説明しているから難解な表現になってしまっているわけであって、内容は充実している。

 例えばキリスト教的世界観と化石の問題がどのような関わり合いを持ってきたのかを語るならば、宗教と科学は明確な対立軸を持っていたわけではなく、時に足枷となり、時に後押しとなった。前者には生物の絶滅や進化の概念だ。原初の創造において不完全な存在の示唆と神の作り出した世界は完璧なものであるとする対立だ。後者で例をあげるなら地球の定向的時間概念である。地球は過去から未来に向かって段階的な歴史を繰り広げているとする概念は、地球の歴史を知ろうとする年代学と化石の起源を結びつけて考えるきっかけとなった。

 

 本書は古生物学の歴史を知りたいという人にオススメの本だと思う。